ほんとは怖い…足関節捻挫の病態

2024年6月14日 カテゴリー:お知らせ,足関節捻挫

皆さんは捻挫に対してどのようなイメージを持っていますか?
「痛いけどほっておけば治るだろう」 「捻挫程度なら我慢すれば大丈夫」 「捻挫は怪我じゃない」などと考えている人も多いと思います。

しかし、足関節捻挫=軽視することは間違いです!!

一度捻挫による靭帯損傷をしてしまうと、80%の確率で再捻挫をするという研究結果があります。
捻挫を繰り返さないためには適切な初期対応とリハビリが必要不可欠ですが、治癒が十分でなかったり、足の機能低下を残したままスポーツ復帰したりする人が多いのが現状です。
捻挫を繰り返し、足の安定化機能が低下すると、特に膝関節が不安定になります!
そのため、捻挫癖がある人に膝の靭帯損傷や半月板損傷などが生じやすいのは必然と言えます。

下記では捻挫の病態、捻挫を繰り返す要因、応急処置方法について説明します!
足の安定化機能の低下を防ぎ、将来的な怪我の可能性を防止するために捻挫についての正しい知識をつけて繰り返す捻挫を予防しましょう!

 

足関節捻挫とは?

関節に力が加わっておこるケガのうち、骨折や脱臼を除いたもの】のことを言います。
簡単に言うと、足が動く範囲を超えるストレスが生じた際に、付着している靭帯や筋肉の腱などにストレスがかかり軽度から重度までの範囲で損傷することです!
しかし、損傷の程度によっては痛みをほとんど伴わないものもあります。

だからこそ捻挫は怪我という認識が薄く、足の機能低下を残しやすいと言えます!

 

捻挫が発生しやすい年齢は?

日本スポーツ協会のスポーツ外傷・障害予防ガイドブック(平成29年3月発行)によると、1年間での外傷発生数は男女ともに小学校高学年(10~12歳)が最も多いと言われています。
外傷発生数全体の割合をみると捻挫は15%の確率で発生しており、手や突き指(全体の20%)の次に多いという結果が出ています!
また、競技別でみると、サッカーやバスケットボールなどの対人の中でターンや方向転換動作を行うスポーツで多く発生しています!

 

捻挫で損傷しやすいのは外側の靭帯!?

捻挫は大きく、内反捻挫(足裏が内側を向く)と外反捻挫(足裏が外側に向く)の2つに分けられており、ほとんどが内反捻挫と言われています。
そのため、今回は内反捻挫で特に損傷しやすい外側の靭帯について紹介します。(図1参照)

足関節の外側は主に下記の3つの靭帯により安定化されています!

図1:足関節の外側靭帯



➀ 前距腓靭帯・・・一番前側に位置しており、捻挫で一番損傷しやすい

② 踵腓靭帯・・・真ん中に位置しており、基本的には単独で損傷しにくく、前距腓靭帯とともに損傷する。

③ 後距腓靭帯・・・後方に位置しており、靭帯の強度が高い。そのため、この靭帯が損傷することは比較的少なくなっている。

次に3本ある靭帯のうち、どこが損傷しやすいのかを説明します!

図2:足関節内反捻挫で各靭帯が損傷する確率



(図2)から一番前方に位置する前距腓靭帯の損傷が90%と特に多いことが分かります!
踵腓靭帯の損傷確率も比較的多くなっており、損傷した際の状況によっては、前距腓靭帯と踵腓靭帯を同時に損傷する可能性もあります。

では特に発生確率の多い前距腓靭帯損傷の損傷メカニズムを説明していきます!

 

内反捻挫はどうして起こる?

先述したように、内反捻挫はスポーツ中に起こる怪我として代表的なものです!

受傷メカニズムとしては、日常生活や運動時に足関節を内側に捻ってしまうことで、靭帯が付着している骨同士が離開し損傷してしまいます。
また、捻挫が生じやすい足にはいくつかの特徴があり、1つでも当てはまる人は注意が必要です!
今回は特に問題となりやすい原因について説明していきます!

捻挫が起こりやすい足の特徴 【足首の硬さがある】

図3:足関節の構造



捻挫をしやすい人の足はつま先を上げる動作(背屈)の可動域制限があることが多いです。

足関節は(図3)のようにくるぶしの骨(内果、外果)の間に距骨という骨がはまり込む構造をしています。背屈位がとれると足関節が安定しますが、足首の硬さがあるとつま先が下を向いてしまい(底屈位)、常に関節のはまりが悪い状態になります。
そのため、足首の安定性が低下し、捻挫しやすくなってしまいます。
特に両足をそろえてしゃがみ込みが出来ない人は足首が硬い可能性があるため、改善することが大切です。

捻挫が起こりやすい足の特徴 【内側のアーチが高くなっている(ハイアーチ)】

図4:足のアーチ構造



ハイアーチ(凹足)とは、(図4)のように正常な足に比べて土踏まずが高い状態のことを言います。このような足の人は、足の外側に体重が乗りやすく、切り返しや方向転換などの動きをした際に捻挫しやすくなります。

 

○捻挫の症状ってどんなの?

図5:内反捻挫の重症度



捻挫の重症度は(図5)のように3つにわけることが出来ます。

Ⅰ~Ⅲまでありますが、重症度が軽い場合でも靭帯や腱に対してストレスが生じ、微細な損傷が生じている可能性があります!

しかし、Ⅰ度の捻挫のように微細な損傷の場合、痛みは少なく、そのままスポーツを続けてしまうことがほとんどです。
冒頭でも説明をしましたが、一度捻挫をすると80%の確率で再捻挫をしてしまうと言われています。

症状が軽いからと言って軽視せずに、適切な対応とリハビリを行い、再捻挫の可能性を低下させることが大切です!

 

もしも捻挫をしてしまったら??

もしも足を捻挫してしまった場合は、PRICE処置を行うようにしましょう!


捻挫をしたけれど痛みはないし歩けるから大丈夫と考えてはいけません。
目には見えませんが、身体の中では靭帯や腱に負担がかかり、炎症を起こしている可能性があります!
適切な処置をすることで損傷を最小限に抑え、治癒期間を短くすることが出来ます。

 

正しい知識をつけ、繰り返す捻挫を予防しよう!

捻挫はスポーツで起こる怪我で代表的な怪我ですが、現代スポーツではまだまだ軽視されやすい怪我と言えます!

今回の記事では下記の点について理解していただきたいと思います!

・損傷の程度によっては、歩行可能なことがあるが軽視してはならない。

・捻挫の痛みを放置してスポーツを行うと、足の安定性が低下してしまうため、捻挫を繰り返し、将来的な膝の靭帯・半月板損傷のリスクが増大してしまう。

・靭帯の損傷を悪化させないためにも初期の対応(PRICE処置)が重要で、損傷の程度を把握するために病院の受診が望ましい。

捻挫についての知識を身に着け、繰り返す捻挫を防止していきましょう!