なぜ?膝の内側痛は何が問題なのか
皆さんは膝の内側が痛くなった経験はありますか?
膝の内側の痛みは、若年層だと過度なスポーツ活動や外傷により発生しやすいですが、中高齢者では、身体活動が低下したことによる、筋機能の低下や肥満が原因で発生することが多いです。
ここでは、膝の内側の痛みの原因組織となぜ痛みが発生するのかについて説明をしていきます。
では、まず初めに、膝の内側の構造を見てみましょう!
膝内側の構造
図1:膝を内側から見た図
膝関節の内側には、膝を構成する骨の間にある半月板(膝の衝撃吸収機能がある)や靭帯、筋肉で安定性を獲得しています。
その中でも、膝を伸ばしながら立っているときは、骨や靭帯がメインで活動しており、膝が曲がっているときは筋肉がメインで活動して安定性を得ています。
そのため、日常生活やスポーツを行う上では、膝の筋肉が適切に働いていることが重要で、適切に動いてない場合は、怪我をする可能性が上がってしまいます。
膝内側痛の種類
図2:膝内側痛の種類
膝の内側痛の代表的なものとしては、図2のようなものがあります。
それぞれの怪我によって痛みの発生しやすい姿勢やタイミングが変わりますが、似たような場所でも他の怪我の可能性があるため、痛みが継続する場合は軽視せずに近くの医療機関に行くことをお勧めします。
では、ここから各怪我別の特徴について説明していきます。
内側側副靭帯損傷
内側側副靭帯は膝を支える主要な4本の靭帯の一つで、文字通り膝の内側に付着しています。膝を捻る動きや膝が内に入る動きを制動しており、高校生や大学生などの成長期を過ぎたスポーツ選手に発生しやすいです。
具体的な受傷機転としては、コンタクトスポーツで膝の外から力が加わった際やサッカーやバスケットボールで急激な方向転換を行い、膝を捻った際に損傷しやすいと言われています。
図3:内側側副靭帯の受傷機転
また、内側側副靭帯損傷は重症度により、予後が大きく変わる怪我です。(図4)
図4:内側側副靭帯の重症度
図4のように早いものでは1週間で治りますが、重症度が高いと数か月単位でかかってしまいます。また、痛みや不安定感がある状態で放置をしてしまうと、将来的に膝を壊してしまう要因にもなります。そのため、適切な診断の元、治療していくことが大切です。
内側半月板損傷
内側半月板は膝を構成する骨の間に存在しており、膝にかかる荷重ストレスを分散する働きを持っています。若年者では、過度なスポーツ活動による慢性的なストレスや、急激な方向転換時や接触により、膝に捻じれのストレスが加わり受傷することが多いです。(図5)
図5:内側半月板の受傷機転
中高齢者になると、肥満や筋機能の低下、半月板自体の強度低下により、日常的な膝のストレスが増加してしまいます。そのため、少しずつ半月板に傷が入り、痛みが発生しやすくなります。
半月板損傷では、関節の可動域制限、膝の腫れが生じることが多く、特に体重をかけた時に痛みが強く発生します。
また、損傷形態や程度によって、保存治療で治るものと手術をしなければならないものに分かれます。そのためにも、病院でMRI検査を行い、治療方法や期間を明確化することが必要です。
鵞足炎
鵞足は、縫工筋、薄筋、半腱様筋が膝に付着している部分のことで、付着部がガチョウの足の形に似ていることから、そのように呼ばれています。(図6)
図6:鵞鳥の足と鵞足
鵞足炎とは、言葉の通り鵞足に炎症が生じている状態のことを言い、ランニングやダッシュの多い競技(サッカー、バスケなど)で発生頻度が高い怪我です。
スポーツを行っている若年者で発生しやすく、ランニングやダッシュ時に痛みを訴えることが多いですが、安静時の痛みや日常生活での痛みはあまりない怪我です。
治癒期間は痛みの程度や感じ方によって変わってきますが、比較的早期の改善が可能です。
ただ、ランニングやダッシュ時の姿勢が原因で痛みが発生していることが多い(図7)ため、治療だけでなく、トレーニングで姿勢や身体の使い方を改善することが大切です。
図7:鵞足炎になりやすい姿勢
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、整形外科疾患の中でも、上位を占めている怪我です。
基本的には、高齢者で発生しやすく、「運動習慣のない人」「膝の怪我の既往歴がある人」「肥満体系の人」などの問題を抱えている人はさらに発生しやすくなります。
高齢者では、20代に比べて、筋力・筋機能の低下、骨密度の低下、半月板の機能低下が生じます。そこに、上記のような問題が加わると、骨が体重を支えきれなくなり、軟骨の摩耗や、骨の変形が生じてしまいます。そして、膝の骨と骨が衝突してしまうことで痛みが発生します。(図8)また、中には半月板の損傷を伴うこともあります。
図8:なぜ、変形性膝関節症になるのか?
変形性膝関節症はグレード0~4の5段階に分かれており、グレードの低いものは、治療と運動で早期に回復しますが、痛みを我慢し続けて状態が悪化すると手術が必要になってしまいます。そのため、早期発見と適切な治療が必要です。
まとめ
今回は、膝の内側痛で多くみられる4つの怪我に焦点を当てて説明をしました。
膝の内側痛は若年アスリートから高齢者まで幅広い年代の方に発生します。特に、半月板損傷や変形性膝関節症は、運動不足や肥満などの生活習慣病との関連性が高い怪我です。
現在痛みを感じている方はもちろん、痛みがない方も予防として運動を行い、何歳になっても自分の足で、好きなところに行けるように心がけていきましょう!